野良猫に対して行われる保護活動の一つにTNRというのがあります。
TNRは野良猫の繁殖を抑てボランティアの方が地域猫として管理し、一代の命を全うさせるために始まった活動です。
私の近隣地域でも野良猫のTNRの活動をされている方がいます。
この野良猫のTNRについて、効果はないという意見や、そもそも野良猫を保護することに対して反対派の意見もあります。
世界では反対を表明している動物愛護団体もあるっぽい。
TNRに関していろいろと思うところがあり、ここでは野良猫のTNRについてその効果や反対される理由など野良猫のTNRについてまとめてみました。
野良猫のTNRは根本的な解決にならない
TNRがなければ野良猫は増える一方なのでしょうか。
野良猫のTNRをしても必ず減るとは限らないです。
たとえば、野良猫の保護活動(TNR)がペット業界に貢献し、返って野良猫を存続させている部分があります。
ペット業界が一方的に悪いわけではないですが、補助金もあるくらいですからね。
あとは、効果が曖昧だったり、効果の前に野良猫を避妊去勢するリスクもあります。
猫は繁殖能力が高いとはいえ、外の厳しい世界で順調に成長し、生き残る猫はどれくらいいるのでしょう。
昔と比べて野良猫が住める環境でもなくなってきていますよね。
弱い個体は生き残れず死んでいき、自然と数を減らしていきます。
他にもTNRで殺処分される猫が減るといわれることがありますが、捨て猫が多いため、TNRが直接的にどれだけ影響があるのかは不明です。
(殺処分を減らす取り組みが活発化していますが、引き取り拒否もあり表面上、殺処分数が減っているだけとも・・)
いろんな理由がありますが、TNRの活動は野良猫をなくす根本的な解決にならないでしょう。
野良猫の保護活動「TNR」とは?
ご存じの方は多いと思いますが、改めて野良猫のTNRについてみていきましょう。
日本では年間で約4万匹の猫が殺処分されているようです。
その主な原因として、
- ペットとして飼われていた猫が捨てられた
- 野良猫同士の繁殖
などがあげられます。
特に猫の繁殖力は高くて1年に3回出産することができ、1度の出産で5~7匹の子どもを産みます。
さらに、生まれた子猫は約半年で出産が可能になるため、爆発的に増えていく計算になります。
この増えすぎた野良猫の糞尿の問題や、ゴミを荒らす被害が急激に増えているので問題視されています。
そういった日本の現状から、さまざまな野良猫の保護活動が行われていて、その一つにTNRという野良猫の活動があります。
TNRは猫を元の場所に戻す
野良猫の保護というと里親探しを連想しますが、TNRはそうじゃない。。
TNRとは、Trap(=猫を捕獲する)Nuter(=猫に不妊去勢手術を行う)Return(=猫を捕獲した場所に帰す)の頭文字をとって名付けられた、野良猫のボランティア活動を意味します。
TNRで保護された猫は去勢や避妊の手術時にその目印として耳をカットし、V字にカットされた耳はさくら猫やさくら耳と呼ばれています。
さくら猫は見た目で手術したことがわかるので、猫の取り違えがなくなるメリットがあり、さくら猫も反対派の意見があるけど、麻酔をして行うので痛みはないみたいです。
TNRの延長で地域猫になることもある
猫のTNRは最終的に元の場所に戻して、その後は野良猫として生きていくことになります。
しかしTNRで野良猫を去勢や避妊手術をした後に元の場所に戻した後、地域で可愛がる地域猫にすることも。
地域猫にする場合はTNRをしたボランティアの方が管理し、野良猫のエサやりや野良猫のトイレの後始末などを中心に猫の世話を行うそうです。
野良猫を完全に保護する場合もある
TNRは野良猫を保護した後に元の場所に戻しますがそうでない場合もあり、保護した猫が子猫だったり、人馴れしすぎている野良猫は一人で生きていけません。
猫の状態によって、TNRではなく完全に猫を保護して里親を探すこともあります。
猫のTNRは効果なし?
ボランティアの方の協力によって成り立っている野良猫のTNRは、実際のところ効果はあるのでしょうか。
猫のTNRについて、効果がないという調査も効果があるとう調査もあります。
「効果がない」というアメリカの論文や反対意見の団体
アメリカではTNRの効果について、「TNRが猫を減らす効果がない」という研究があります。
- TNRを完全に施しすことは難しく、未去勢の猫同士で繁殖してしまう
- TNRをしても他の地域から猫が流入し、繁殖してしまう
などの原因があげられます。
他にもセントラルフロリダ大学がキャンパスの野良猫を66%減らすことができたという研究では否定されています。
動物行動学者のリチャードコニフ氏のレポートでは、TNRの成功に関する論文(セントラルフロリダ大学)について嘘だと主張してます。
その内容は、あらかじめ管理可能な数に猫を減らしたことで、TNRで減少したようにみえるということ。
そもそも海外ではTNRという発想はない現実もあります。
肉食動物なので生態系を変えてしまうからです。
いくつかの州では野良猫の狩猟駆除は合法です。
また、いろんな団体がTNRに反対していて、世界最大規模の動物愛護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)や、世界的権威を誇るRSPCA(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)などがあります。
「効果がある」という日本の行政アンケート
アメリカの論文では「猫のTNRは効果がない」という結果ですが、効果があるというデー(2018年)タもあります。
海外の状況と日本はまた違うので、単純に比較することはできませんが、参考になるかと思います。
TNRの効果がなかった日本の事例
伊豆諸島・御蔵島(みくら)では野良猫のTNRを行っていますが、大量繁殖したというのがあります。
かつては伊豆諸島・御蔵島はオオミズナギドリの世界最大の繁殖地でしたが、今では準絶滅危惧種(IUCN)です。
急減した大きな原因となったのが、島外の人が持ち込んだ猫が野生化し捕食していたことです。
そこで野良猫のTNRが始まりました。
アニマルライツセンターが中心となり、2005年から2015年にかけて行ったTNRは389匹です。
しかし2007年時点では野良猫は約300匹と推定されていましたが、2012年には500匹にまで増加しています。
少なくともこの期間(5年)はTNRを強化したにもかかわらず、野良猫が増えているという事実があります。
2015年からは御蔵島の野良猫は島外排出に方針転換していますが、譲渡先は絶対的に不足しています。
>>オオミズナギドリの繁殖地 御蔵島 ノネコ里親プロジェクト
野良猫のTNRに反対する意見やデメリット
野良猫のTNRについては賛否の意見があり、メリットばかりではない。
実際にどんなデメリットや反対の意見があるか見ていきます。
デメリットも反対の声も似ていて、下記のようになっています。
- 全ての猫に行えない
- 人や環境にとって悪影響がある
- 猫にリスクがある(術後のQOL)
- TNRの効果がよくわからない
- 時間とコストがかかる
TNRの一番のデメリットは、元に戻すという行為により、多かれ少なかれ害が出てしまうこと。
人間への悪影響でいうと、糞尿の被害。
全ての猫にTNRを行えないことはデメリットでもあり、その効果も明確ではありません。
野良猫を保護(管理)しても、目に見えて劇的に野良猫の被害が収まったり、数が減るかというとそうではありません。
TNRの効果を示す研究はたくさんありますが、明確に効果があって確実に減少したというのはあまりないです。
猫の去勢や避妊の手術には野良猫特有のリスクもあります。
オス猫なら去勢で弱くなり、厳しい外の環境で生き残ることができるのでしょうか。
他にも捕獲によってそのエリアから猫が出てしまうこともあり、そうなると術後の猫の管理はできません。
保護した猫を戻すことで場所が限定されるので、猫同士の感染症のリスク、TNRした野良猫が地域猫として生きていくリスクもあります。
野良猫(地域猫)が人間に慣れてしまうことで、猫が危害を受ける可能性もあるでしょうね。
猫のTNRに反対する意見は効果がわからないとか、被害に関する声が多いです。
TNRは猫を保護しても外に戻すので、野良猫の被害はどうしても出てしまいます。
野良猫の被害を減らすためのTNRなのに、なぜ反対するのでしょう。
TNRを反対している方の中には、正しい知識がないというのもあるかもしれません。
野良猫のTNRのメリット
- 殺処分の猫が減る可能性
- 去勢手術の際に健康診断も行う
- 糞尿の被害が減る
- 鳴き声による騒音被害が減る
TNRに対して効果がないと言われることもありますが、このような効果が期待できます。
保護された猫は去勢手術の際に、協力獣医師が最低限の健康状態もチェックしたり、病気の有無やノミ、ダニがいないか等を調べて適切な処置を行います。
感染症や衛生上の心配もなくなるのは、近隣の住民の方も安心するし、糞尿の被害も減らすことができます。
2019年の研究では、10年間にわたりTNRで管理した野良猫は、予防可能な病気による死亡が31倍少なかったというのもあります。
臭いや騒音が近隣トラブルの原因になることが多いので、TNRによってこれらが抑制できるのは大きなメリットと言えますね。
野良猫のTNRの効果やデメリットと反対の意見のまとめ
野良猫のTNRにはメリットも多いが、デメリットや反対の意見もあります。
さまざまな考え方があるため、一概にどちらが正しいとは言い切れません。
TNRをすることで野良猫が減っている部分もあるが、本気で減らすために活動するならばもっと根本的に考える必要があります。