今でこそ当たり前のように与えているペットフードですが、そのの始まりや歴史は何があったのでしょう。
ペットフードができる前は、犬は飼い主の残飯を与えられることが多く、猫も残飯やネズミを捕食していました。
世界最初のペットフードはキャットフードではなくドックフードですが、日本でのペットフードの歴史は少し違います。
ここではペットフードの歴史を見ていきましょう。
歴史1.ペットフードの始まり
ペットフードとして初めて商業的に販売されたのは1860年頃です。
最初はキャットフードではなく、ドッグフードでした。
ロンドンに住んでいたアメリカ人のジェームススプラットという方が考えたものです。
ジェームススプラットは実業家(機械技師)で、当時の最新技術である避雷針をセールスのためにロンドンに訪れていました。
その際に波止場で犬がビスケットを食べているのを見て思いついたのです。
野良犬が食べていたビスケットが始まり
イギリスの船乗りたちの食事は長期間航海することが多かったこともあり、食糧の管理がとても大変でした。
当時は食べ物の長期保存の技術が発達しておらず、イギリスの船乗りたちの食事の一つのビスケットがあったのですがとても不評でした。
ビスケットは長期的な保存ができるよう、カチカチになるまで固く焼き、その固さから「リバプール(イギリスの都市)の敷き瓦」と揶揄されていたほどです。
ビスケットは船乗りたちに人気がなく、航海が終わるといつも大量に残ってしまいます。
その残ったビスケットを航海が終わるたびに波止場に捨てられ、その捨てられるビスケットを分けてもらい犬に与えました。
ジェームススプラットは犬がビスケットをおいしそうに食べてる姿を見て、ドッグフードをひらめいたようです。
1860年にドッグフードを販売
ジェームススプラットは1860年に世界初のドッグフードをロンドンで開発し事業化していきました。
世界初の商品化されたドッグフードは、ジェームススプラットの名前を取って、
Spratt's Patent Meat Fibrine Dog Cakes
(フィブリンドッグケーキ)
と名付けられました。
当時の世界初のドッグフードの内容は、小麦と野菜とビーツと牛(血)を混ぜてビスケットのように固く焼いたものです。
富裕層をターゲットにして、犬の健康を謳うマーケティングでイギリスで成功を収めました。
当時から子犬用にはタラ肝油を加えたり、魚の身とスパイスを加えたもの、缶入りの半生タイプなど、複数のフレーバーがありました。
1870年代にはアメリカへ進出し、アメリカを拠点に移してペットフード産業が発展していきます。
1881年に「Meat Fibrine Dog Cake(ミートフィブリンドッグケーキ)」のアメリカ特許を取得し、アメリカ全土で販売されるようになりました。
1894年にアメリカでSpratt's Patent (America) Ltd(スプラッツ・オブ・アメリカ)を設立し、この会社は1950年代にGeneral Foods社(ジェネラルフーズ)に買収されました。
1922年には缶詰型のドックフード、1927年にはアメリカのゲインズ社が初のドライドッグフード(粉末)が誕生しています。
缶詰のドッグフードは、第一次世界大戦時にフランスへの食糧援助として送っていた馬肉の缶詰が余ってしまい、ペットフードに使用されたものです。
缶詰のドッグフードは大ヒットし、ペットフードは缶詰から一般家庭へ広がっていきました。
粉末状のドライドッグフードはヒットせずに終わっています。
第二次世界大戦前から犬用の缶詰が普及したため、第二次世界大戦で鉄不足となったため、缶詰を作ることができなくなりました。
そのため、新しい製造法の開発が望まれ、誕生したのが後述しているドライフード(DOG Chow)です。
1956年に初のドライフードが誕生
1894年にアメリカの飼料会社「ロビンソン・ダンフォース・コミッション」がアメリカ(セントルイス)で創業しました。
これが現在のネスレのペットケア部門であるピュリナの前身です。
今のペットフードで当たり前になったドライフード(粒=キブル)は、1956年にピュリナ社がエクストルードという、押出成形(加熱加圧)の技術を開発したのが始まりです。
エクストルーダーはもともとプラスチックの製造に使用されていたものですが、「この機会をドッグフードの製造に使えないのか」と、思いついたのがピュリナ社のコービン博士です。
ドッグフードの製造にエクストルーダーが導入され、1957年には世界初のドライドッグフード「DOG Chow」を製造しました。
瞬く間に広まり、ペットフード産業の発展につながっていきます。
※現在、ドライフードは、粉末やペースト状の原材料を混ぜて、エクストルーダーを使用し、水分量が10%以下になったフードと定義されています
ピュリナ
- 1902年
社名変更でラルストン・ピュリナとなる - 1948年
アメリカでペットフード事業を開始 - 1956年
フリスキーブランドのドライキャットフードを発売 - 1973年
1食分の缶入りドッグフードを発売 - 2001年
ネスレに買収されて現在のネスレ・ピュリナ・ペットケアとなる
歴史2.日本でのペットフードの始まり
日本では1960年代に初めてペットフード(ドッグフード)が発売されています。
日本のペットフードは戦後
日本の戦時中にアメリカでは先駆けてすでに当たり前の存在となっていたドッグフードが、アメリカ軍より日本に持ち込まれました。
第二次世界大戦後、軍用犬を日本に連れてきたため、その軍用犬向けにドッグフードが売られるようになったのがきっかけです。
その影響で1960年(イギリスで世界初のドッグフードが誕生してから100年後)に国内初のドックフードが発売されました。
当時の日本は高度経済成長期で、ペットを飼う家庭が増加し、ドッグフードも売り上げがどんどん伸び流行っていきます。
日本の飼い主の意識も残飯を与えることから、ドッグフードへと意識が変わり、イギリスで初めて発売された時と同じ状況になりました。
その人気は今でも衰えず、ペットの食事といえば、ペットフードというのが定着しています。
日本初のペットフードはビタワン
VITA ONE(ビタワン)は初の国産として一時代を築き上げました。
1960年に日本初の粉状のドッグフード「愛犬の栄養食VITA ONE」が発売されました。
その後ビスケットタイプのビタワンを経て、1961年には、日本で初めてアメリカから輸入したエクストルーダーを導入し、ペレット状(小粒)の「愛犬の栄養食VITA ONE」が発売されました。
そして、現在のドライタイプの形状に近いペレット状のドライフードが誕生しています。
1964年には組織を独立させて、日本ペットフードを設立しています。
ビタワンの意味は、ビタミンの「ビタ」と、数字の1と犬の鳴き声「ワン」から付けられたようです。
1966年には第二号となる配合飼料メーカーの日本農産工業という現在のペットライン社がドッグヒットというドッグフードを発売しています。
日本農産工業は当時日本では入手が困難だったエクストルーダーを開発し、国産の設備で国産のペットフードを作ることに成功しました。
キャットフードは1950年代に登場
キャットフードは1950年代にアメリカで登場しています。
今から63年前とまだまだ歴史は浅い。
ビスケットがペットフードの始まりで、その後ドッグフードが発売されましたが、それまでドッグフードやキャットフードという概念はありません。
最初のキャットフードは缶詰
ドッグフードに遅れてキャットフードも開発されました。
初期のキャットフードは1950年代の製品があり、缶詰工場で出る魚肉残渣を利用したものです。
1950年代にピュリナ社がドッグフードの大量生産を開始していますが、キャットフードは需要が少なく、ドッグフードを転用や共用したものでした。
しかし、その後、猫特有の栄養学が発達していき、猫専用のキャットフードが開発されるようになりました。
アメリカでは1960年に入ると、タウリンが強化されたキャットフードが発売されています。
日本には1958年にキャットフード(缶詰)があった
実は日本ではキャットフードの缶詰が、ドッグフードよりも先に作られていました。
製造はあのツナ缶で有名ないなば食品株式会社です。
※いなば食品株式会社は1992年に日本初の本格的なペットフード缶詰工場を稼働させ1995年に国内生産量で首位となっています
つまり、日本で初めてのペットフードはキャットフードということです。
1958年に米国企業のOEMを受託したことが始まりで、猫缶のキャットフードはマグロの血合肉を使用しています。
この缶詰タイプのキャットフードはアメリカへの輸出用のため、一般向けには販売されていません。
一般家庭向けに販売されたのは、2年後の1960年です。
それが日本初のペットフード(ドッグフード)であるビタワンです。
日本ではドッグフードは1960年代、キャットフードは1970年代に国内で広まっていきました。
ペットフードの歴史はビジネス
現在、犬や猫の食事(エサ)というと、ペットフードです。
多くの飼い主さんは「ペットフードの総合栄養食=栄養バランスが整った健康食」と認識しています。
こだわる飼い主さんは、高級ラインのペットフードを与えていますよね。
しかし、ペットフードの始まりはビジネスです。
偶然始まり、商業的に利用されてきたのが歴史でわかります。
いかにペットフードが健康的なのか、上手く宣伝して広まっていきました。
そういった歴史があり、今もそんな面があります。
これ以上は控えますが、ペットフード選びはけっこう注意が必要です。
ペットフードの中身について過激な情報も散見されますが、歴史などを見れば全否定できない部分もあるのです。
ペットフードにはどんなものが使われているのか、それらが本当に安全なのか、よく調べてくださいね。
ペットフードの歴史と始まりのまとめ
ペットフードの歴史を見ると、その始まりは偶然見たビスケットでした。
そこからドッグフードが開発され、流行っていき定着していくわけですが、日本ではキャットフードが最初だったのは驚きです。